【メディア】スポーツ中継の“黒船”DAZNが日本市場を制覇するのか

「日本市場参入から1年半。序章は終わり、さらに1段階進む時が来た」――英Perform Groupで、スポーツの動画配信サービス「DAZN(ダ・ゾーン)」事業のCEO(最高経営責任者)を務めるジェームズ・ラシュトン氏は、2月16日開いた会見でこう話した。

プロ野球11球団のライブ配信に対応、巨人とも交渉中

 DAZNは同日、2018年シーズンからプロ野球のコンテンツ配信を本格化すると発表。セントラル・パシフィック両リーグのうち、読売ジャイアンツを除く11球団のオープン戦の一部と公式戦全試合を2月24日からライブ配信する。

 うちセ・リーグの放映権は、5月の終了が決まっているソフトバンクの動画配信サービス「スポナビライブ」から受け継いだもの。パ・リーグは、DAZNがリーグや各球団と独自に交渉した。

 DAZNの大崎貴之バイスプレジデントによると「合意のめどについてはコメントを控えるが、巨人軍とも交渉している」という。

●国内市場で独走態勢

 16年8月に突如として日本市場に参入し、Jリーグの放映権を競合の「スカパー!」から奪ったことから“黒船”とも称されるDAZNだが、新たに「スポナビライブ」からプロ野球の放映権までも獲得。2つのキラーコンテンツを手中に納め、国内市場の“制覇”にさらに近づいた形だ。

 ラシュトンCEOは「『日本での動画配信サービスは、欧米ほど浸透していない』という声をよく聞くが、私はそうではないと考える。DAZNのラインアップと品質は“ベスト”。今後も適切な料金でサービスを提供すれば、日本の消費者はついてくると信じている」と自信を見せる。

●「B.LEAGUE」に対応も、ソフトバンクとの連携は不明な点も

 国内スポーツではこのほか、18年から国内男子プロバスケットボールB.LEAGUE」の放映権も獲得している。ただ、同リーグのトップパートナーを務めるソフトバンクは「スポナビライブ終了後も配信を継続する」と2月8日に発表。その後は具体的な声明を出していない。

 報道陣から今後のソフトバンクとの連携や役割分担について問われたラシュトンCEOは、「コメントできる立場にない」と話した。

●海外サッカー中継もさらに充実

 国内市場での地位をさらに強固にするため、海外スポーツ番組も拡充する。欧州サッカーでは、従来は毎節最大5試合としていた「プレミアリーグ」(イングランド)と「リーガ・エスパニョーラ」(スペイン)の配信を2月10日から全試合に拡大している。

 「UEFAチャンピオンズリーグ」「UEFAヨーロッパリーグ」「UEFAスーパーカップ」のライブ中継を行うことも決定済みだ。

 DAZNは今夏開催される「FIFAワールドカップ」の放映権は持たないが、ラシュトンCEOは「代表選手が所属するクラブの試合を網羅しているため、当社のコンテンツに注目が集まるチャンスだと捉えている」と強気な姿勢を崩さない。

●CMで自ら「黒船」アピール

 一連の施策をアピールするため、DAZNは現役スポーツ選手を「DAZNアンバサダー」に起用し、知名度を生かしたPRも行っていく。

 2月19日からは、サッカーの内田篤人選手、三浦知良選手らが「幕末の志士」に、サッカー解説者のセルジオ越後氏が「ペリー提督」に扮(ふん)したCMなどを放映。“黒船”との呼び名を自らアピールする。

 大崎バイスプレジデントは「CMでは、当社の強みを正面から打ち出すことを心掛けた。今後も、視聴者に対するバリューをシンプルに伝えていきたい」と意気込む。

プロ野球選手もアンバサダーに

 19日から放映する新CMには出演しないが、プロ野球選手からは西川遥輝選手(北海道日本ハムファイターズ)、山?康晃選手(横浜DeNAベイスターズ)がDAZNアンバサダーに就任。プロ野球配信の開始をファンにアピールしていく。

 会見では、ゲストとして元プロ野球選手の多村仁志氏と小宮山悟氏が登壇し、「アンバサダーの2人は球界きっての“イケメン”。頑張って魅力を届けてほしい」(多村氏)、「自分の現役時代は仏頂面がトレードマーク。当時からDAZNがあったとしても、CMのオファーは届かなかっただろう」(小宮山氏)などとコメントし、会場を沸かせた。

 こうした有名選手・OBとのコネクションの強さもDAZNならではだ。DAZNはこの勢いのまま、日本市場で独走態勢を続けていくのだろうか。

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180216-00000081-zdn_mkt-bus_all